派遣の基礎知識

派遣の基礎知識

派遣の基礎知識

派遣事業に関する法律は「労働者派遣法」で定められていますが、この労働者派遣法は現在まで数回に渡り、時流に応じて改正されています。ここでは派遣で働く人なら知っておきたい「労働者派遣法」と改正されたポイントをご説明します。

 

「労働者派遣法」は、1986年7月1日から施行されました。そして1999年、2004年、2006年にそれぞれ改正が行われています。まず「労働者派遣法」について説明します。

 

「労働者派遣法」とは「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」のことで、労働力の需給の適正な調整を図るため、労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の就業に関する条件の整備等を図ることで、派遣労働者の雇用の安定、福祉の増進に資することを目的としています。また派遣事業所の運営、就業条件の整備ともに違反した場合の罰則についても定められています。

 

 

1999年の改正
・派遣可能分野の拡大
それまでは派遣が可能な13業務を指定していたが、派遣を禁止する6業務を指定することで可能業務を拡大

 

 

2004年の改正
・派遣業務禁止分野の解禁
「物の製造」の業務解禁:物の加工、組み立て、鋳造などの業務のこと。最長3年までという期限付きで解禁
「医療機関関連」の業務解禁(条件付き):医師や看護師などの医療機関業務のこと。紹介予定派遣に限り解禁

 

・派遣期間の変更
専門的26業務:3年から無制限に変更
専門的26業務以外:1年間から3年間へ変更

 

・紹介予定派遣制度の変更
禁止されていた派遣前の履歴書の送付、事前面接が解禁
派遣期間が1年間から6ヶ月間に変更
派遣期間中の派遣社員の正社員登用の内定、就職する意思の確認が可能となった

 

 

2006年の改正
・「医療機関関連」の業務部分解禁
離島や過疎地域などの病院・診療所への医師の派遣、産休や育休、介護休業を取得した医師や薬剤師、保健師、看護師らの代替要員の派遣が解禁

気になる派遣社員の保険の加入状況ですが、派遣社員でも健康保険、厚生年金などの社会保険の加入することができます。それには以下の2つの条件を満たす必要があります。

 

@2カ月以上の雇用契約を結んでいること
A労働日数、労働時間が派遣会社の定める所定労働時間の 3/4以上であること

 

この2つの条件を満たしていれば、登録した派遣会社で、社会保険に加入することができます。これは労働者派遣法で派遣会社に義務づけられています。この2つの条件を満たした人を派遣する場合、派遣会社は社会保険への加入と、さらに社会保険加入の有無を派遣通知書に記載しなくてはなりません。

 

また、派遣先企業にも社会保険加入の有無を確認する義務があり、保険未加入の派遣社員の長期に渡る受け入れはできません。社会保険に加入する際の保険料は、派遣社員と派遣会社が折半での負担となります。

 

さらに、派遣会社に登録した後、派遣の仕事を探している間も健康保険に加入することができます。派遣社員のための健保組合「人材派遣健康保険組合」が2002年に設立されました。

 

以前は派遣社員として就業期間は派遣会社の健康保険に加入できても、契約が終了する度に「国民健康保険」に入り直す必要があるため、その加入・脱退の手続きの煩わしさから、健康保険に加入しない派遣社員もたくさんいました。

 

その問題を解消するため、現在では同じ派遣会社で引き続き派遣社員として働く予定がある場合、派遣社員は次の仕事を探している間も派遣会社の健康保険の加入を継続できることになっています。

正社員として、企業に勤めている人なら年末調整は会社が代行してくれるので、個人での確定申告の必要はありません。でも、派遣社員の場合の年末調整・確定申告はどうなるのでしょうか?

 

その点はご心配ありません。派遣社員の場合でも、その年の12月の時点で派遣社員として働いていれば、派遣会社が代行して年末調整をしてくれるので確定申告の必要はありません。

 

また、その年に複数の派遣会社で働いていた人で、年末調整を代行してくれた派遣会社以外からの収入が20万円以下の人も確定申告の必要はありません。その場合は、その年に登録していた全ての派遣会社から「源泉徴収票」を発行してもらい、12月の時点で登録し、仕事を受けている派遣会社に提出すれば大丈夫です。

 

しかし、以下に当てはまる人は自分で確定申告を行わなければなりません。

 

【確定申告の必要がある場合】

 

・12月の時点で派遣社員として働いていない場合
・12月の時点で派遣社員として働いていても、現在登録している派遣会社以外からの収入が年間20万円を超える場合
・派遣以外からの収入が年間20万円を超える場合

 

上の条件に当てはまる人は確定申告に行く必要があります。確定申告は毎年2月16日〜3月15日の間に行います。また、税務署の窓口に行かなくても、WEB上から簡単に手続きをすることができます。国税庁のWEBサイトから確定申告書を作成し、郵送するだけで、還付の場合は2週間ほどで指定口座へ還付金が振り込まれます。

 

詳しくは以下のサイトを参考にして下さい。
・国税庁のWEBサイト 

【給料】
派遣社員のお給料は時給制になっています。残業時にはタイムシートを押しますが、派遣会社によってその単位に違いがあります。通常は5分や15分のところが多いようです。

 

働く側にしてみれば、すこしでも単位が細かいほうが、短い時間でも働いた時間が無駄にならなくて済みますよね。派遣会社を選ぶ際の参考にしてください。また、15分以上30分未満の単位でタイムシートを設定することは禁止されていますが、悪質な派遣会社はタイムシートを30分単位にしているところもあります。そのような派遣会社に引っかからないように、事前に調べておきましょう。

 

また、派遣社員の残業代、休日出勤の時給についてですが、残業代・休日出勤は、通常の時給の1.25倍。深夜23時以降や祭日出勤は、通常の時給の1.35倍になります。この場合は何時から残業時間になるのか確認しましょう。普通は8時間労働を過ぎてから、残業扱いとなり、時給が1.25倍となりますが、契約内容によっては、7.5時間を過ぎてから残業扱いになる場合もあります。

 

お給料の支払日についてですが、派遣会社によって月に1回の会社と月に2回の会社があります。月2回であれば、月の前半の分をその月の30日(もしくは31日)に、月の後半の分を翌月の15日に支払日を設定している派遣会社ががほとんどです。

 

【ボーナス・各種手当て】
基本的には派遣社員のボーナスや交通費などの手当ては出ません。しかし、派遣会社や選ぶ職種によってはボーナスが支給される派遣会社もあるので、気になる人は登録する派遣会社を選ぶ際に調べてみましょう。

 

各種手当ですが、特に交通費については給与に込みになっている派遣会社が多いようです。派遣会社によっては別途支給されるところもありますが、その場合は他の派遣会社よりも時給が低く設定されているなど、総支給額はあまり変わりません。

【休日】
派遣社員の休日は派遣先企業によって異なります。雇用契約の際に雇用契約書に書かれているので確認してみましょう。また、派遣先企業によっては、休日が多い会社や、逆に休日の少ない会社もあります。GWやお盆・お正月休みを長く取る会社は正社員ならありがたいですが、派遣社員の場合お給料に大きく響いてくるので注意が必要です。

 

【有給休暇】
派遣社員にも有給休暇があります。有給休暇を貰うには、以下の条件を満たす必要があります。

 

@6ヶ月を継続勤務していること
A契約している労働日の8割以上出勤していること

 

派遣社員として仕事を開始してから6ヶ月経ってから最初の有給が付与されます。初年度の有給休暇は10日間で、その後1年ごとに一日ずつ増えていき、最長で20日間の有給休暇が貰えます。しかし、労働日数、労働時間が週に4日以下・週30時間未満の場合には、その日数に比例して有給休暇は少なくなります。

 

また、@については雇用契約が1ヶ月や3ヶ月の短期であっても更新して総計が6ヶ月以上なら大丈夫です。しかし、ここで言う継続勤務とは「同一の派遣会社での継続勤務」となりますので、もし途中で派遣会社を変更している場合は、継続とは認められません。

 

また有給休暇には有効期限があり、それを過ぎてしまうと権利は失効します。有効期限は権利をもらってから2年間です。さらに、仕事の契約期間と契約期間の間が 30日以上空いた場合も有給休暇権利は失効します。

【健康診断】
派遣社員であっても、もちろん健康診断を受けることができます。これは「労働者派遣法」で定められており、派遣会社には派遣社員に年に1回健康診断を受けさせることが義務づけられています。

 

大手派遣会社なら、待っていれば健康診断の時期になるとお知らせが送られてくるので、後は指示に従い指定された病院で、希望の日時に健康診断を受診すればよいのですが、小さい派遣会社だと、健康診断を行ってくれない派遣会社もあります。

 

健康診断は派遣社員にとって当然の権利なので、その場合はきちんと申請しましょう。しかし、健康診断の実施の時期は派遣会社によって異なるため、その時期に派遣社員として仕事をしていない場合は健康診断を受診できないこともあります。

 

 

【産前・産後休暇、育児休暇】
派遣社員であっても、健康保険に加入していれば産前産後を取ることができます。また、休暇中の保障として出産一時金、出産手当金の給付を受けることができます。出産育児一時金は被保険者が分娩したときに約30万円、出産手当金は産前休暇に対応する42日間、産後休暇に対応する56日間についてその期間の給与の60%が支給されます。しかし、産前休暇については派遣社員が請求しなければ与えられないので、きちんと申請しましょう。産後休暇については、本人に働く意思があっても、必ず6週間は取らなくてはなりません。

 

育児休暇についても、子どもが1歳未満であれば取ることが可能です。しかし以下の2つの条件を満たす必要があります。

 

@育児休暇の申請をした時点で同じ派遣会社で、1年以上継続して雇用されていること。
A子どもが1歳になった後も継続して雇用が見込まれること。
(子供が2歳になるまでに雇用が終了することが明白である場合を除く)

一口に派遣といっても様々な職種があります。普通の正社員でも職種によって、給料は大きく異なりますが、それは派遣の場合も同じです。ここでは職種ごとの平均時給を見ていきます。

 

派遣社員の時給を総合的に見てみると、平均時給は1605円となっています。2007年前半から見ると平均時給は35円ほど上がっており上昇傾向にあります。職種別に見たときに最も平均時給が高いのは「SE・プログラマ・ネットワークエンジニア」で2287円、ついで「運用管理・保守」で1944円、「通訳・翻訳」で1910円となっています。そして平均時給が最も低いのは「介護関連」で1193円、ついで「軽作業」の1208円、「医療事務」で1226円となっています。

 

また、時給上昇率で見たときに最も高いのが「財務・会計」で前月比5.2%上昇、ついで「通訳・翻訳」で前月比1.8%上昇、「旅行関連」で1.8%上昇となっています。逆に最も下降率が高かったのは「軽作業」で前月比3.0%減、ついで「製造・物流関連」で前月比2.5%減、「接客・窓口カウンター」で前月比2.4%減、「OAインストラクター」で前月比2.2%減となっています。

 

 

【職種別平均時給】

 

一般事務 1,532円
営業事務 1,557円
英文事務 1,684円
通訳・翻訳 1,910円
金融事務 1,608円
経理・英文経理
財務・会計 1,729円
総務・人事・広報・宣伝
秘書 1,698円
受付 1,447円

 

データ入力 1,463円
OAオペレータ 1,607円
企画・マーケティング 1,682円
営業・企画営業 1,660円
販売 1,339円
接客・窓口カウンター 1,353円
テレマーケティング 1,522円
旅行関連 1,482円
エステティシャン 1,317円

 

SE・プログラマ・ネットワークエンジニア 2,287円
運用管理・保守 1,944円
ユーザーサポート・ヘルプデスク 1,743円
OAインストラクター 1,641円
テスト・評価 1,716円
CADオペレータ・CAD設計 1,620円
設計(電子・機械・建築) 1,826円
デザイナー 1,553円
Web関連 1,705円
編集・制作・校正 1,630円
DTPオペレータ 1,626円

 

医療事務 1,226円
介護関連 1,193円
看護師・准看護師 1,724円

 

製造・物流関連 1,305円
軽作業 1,208円
インストラクター・講師 1,724円

 

 

2007年10月時点でのデータ 出典 2007年2月〜2007年8月 リクナビ派遣

現在、非常に多くの分野で派遣社員が活躍していますが、すべての業種・職種で派遣社員が働けるわけではありません。「労働者派遣法」制定時は13の業種しか派遣は認められていませんでした。しかし、1999年、2003年、2006年の度重なる「労働者派遣法」改正の末に現在では26業種で派遣社員の導入を認めています。現在でも派遣社員の業務が認められていないのは、高度な専門知識が要求される重要な業務がほとんどです。

 

【派遣社員が働ける職種】
ソフトウェア開発
機械設計
放送機器等操作
放送番組等演出
事務用機器(OA機器)操作
通訳・翻訳・速記
秘書
ファイリング
調査
財務処理
取引文書作成業務
デモンストレーション
添乗
建築物清掃
建築設備運転、点検、整備
受付・案内
駐車場管理
研究開発
事業の実施体制の企画・立案
書籍等の制作・編集
広告デザイン
インテリアコーディネーター
アナウンサー
OAインストラクター
テレマーケティング
セールスエンジニア
放送番組の大道具・小道具

 

【派遣社員が働けない職種】
港湾運送業務
建設業務
警備業務
医療業務(しかし、紹介予定派遣、もしくは離島や過疎地域などの病院・診療所への医師の派遣、産休や育休、介護休業を取得した医師や薬剤師、保健師、看護師らの代替要員の場合は可能)
弁護士、外国法事務弁護士、司法書士、公認会計士、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士、土地家屋調査士など「士」のつく資格が必要な業務。

お給料は多ければ、多いに越したことはありませんよね。でももしあなたが結婚をしていた場合、必ずしもお給料が多ければ多いほど良い…というわけではないことご存じでしたか?

 

そのお給料の額のボーダーが実は103万円なのです。では、この103万円を超えてしまうと、具体的にはどのような損をするのでしょうか。あなたが稼いだ金額に影響するのは「税金」です。金額によってそれぞれ「所得税」と「配偶者控除」に影響してきます。

 

 

【所得税について】

 

「所得税」とは、年収にかかる税金のことです。しかし、年収のすべてが税金の対象になるわけではありません。無条件に年収から一律38万円を課税対象から差し引ける「基礎控除」、年収の中でも給与だけに適用され、その給与から65万円を課税対象から差し引ける「給与所得控除」があります。ですので、「基礎控除」と「給与所得控除」を合わせた103万円の控除が受けられるので、年収が103万円以下ならば所得税は全くかからないことになります。これは正社員、派遣社員、パート、アルバイト、全ての人に共通して言えることです。

 

 

【配偶者控除について】

 

「配偶者控除」とは、配偶者(一般的には妻を指す)の年収が103万円以下の場合は、夫の年収から38万円を課税対象から差し引けるというものです。ですので、あなたの年収が103万円以下ならあなた自身の「所得税」を払う必要はなく、さらに夫の年収から38万円を控除することができます。「扶養枠内での仕事を」というのは年収を103万円以下に抑えるという意味です。これが103万円がボーダーと言われる理由です。「年収が103万円を数万円だけ超えていた」、という場合は103万円以下ギリギリに押さえていた人と比べて非常に損することになります。特に配偶者がいる人は、この点に注意して賢く働きましょう。

「派遣」とよく間違われる雇用形態に「請負」というものがあります。この2つは仕事内容自体はほとんど変わらないことが多いですが、この「派遣」と「請負」の違いは何なのでしょうか?

 

「派遣」とは、派遣会社と派遣先企業(クライアント)が「スタッフを派遣する」、という派遣契約を交わした上で、派遣社員が派遣先企業に派遣されることです。その際に、派遣社員は派遣先企業の指揮命令は受けますが、派遣会社と派遣社員は業務の遂行・完成の責任までは負いません。

 

一方、「請負」とは、請負人(請負企業)がクライアントと「契約内容にある業務についてその遂行・完成まで責任持って引き受けます」という請負契約を交わした上で、スタッフがクライアント先で働くことを言います。

 

この時、「派遣」と「請負」の違う点は、クライアントから指揮命令を受ける義務は無いという点です。クライアントからの指揮命令を受けると、それは派遣契約と同じになってしまい、「偽装請負」となり違法になります。また、請負人に指揮命令を行うのは、請負人が所属する請負業者となります。

 

さらに、「派遣」と「請負」では契約期間にも違いがあります。職種にもよりますが、契約期間に最大で3年の制限がある「派遣」と違い、「請負」に制限は無く、連続しての長期契約が可能になっています。また、労働者のみを供給する「請負」も「派遣」同じになってしまうため、禁止されています。

 

一見似たようなイメージの「派遣」と「請負」ですが、この2つの間には大きな違いがあります。

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